研究課題/領域番号 |
22540107
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
黒瀬 俊 関西学院大学, 理工学部, 教授 (30215107)
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キーワード | 古典的微分幾何 / 曲線の運動 / 可積分系 / ハミルトン系 / アフィン微分幾何 / ヘッセ多様体 / ヘッセ断面曲率 / 情報幾何 |
研究概要 |
古典的微分幾何とその応用に関して、可積分系理論などの手法や成果を取りいれた現代的観点から研究を行い、曲線の運動、アフィン幾何、ヘッセ幾何などに関し成果を得た。以下、主要な結果のいくつかを具体的に述べる。 1 曲率が可積分系方程式に従って時間変化する種々の平面曲線の運動を幾何的に調べ、特に等積中心アフィン曲線およびユークリッド平面曲線の運動は、それぞれ曲線の空間上の双ハミルトン系として記述され、さらにハミルトン関数による等位集合上では多重ハミルトン系として記述されること、これらは幾何的なミウラ変換で結びついていることを発見した。これは可積分系理論の具体的な適用例としてだけでなく、可積分系理論を幾何化していく上でも重要な結果である。この発見を一般化し、さまざまな可積分系方程式について同様の記述を与えることが今後の課題である。 2 アフィン平面の凸領域におけるアフィン幾何的な撞球を考え、特に二次曲線で囲まれた領域(有界とは限らない)のアフィン撞球は双曲平面の特定の領域における撞球と同値であることを具体的に示した。非常に限られた場合ではあるが、アフィン撞球と従来の撞球の関係の一部を明らかにしたことで、今後の研究の基礎となるものである。 3 ヘッセ断面曲率一定(定曲率)のヘッセ多様体の構成・分類はヘッセ幾何の基本問題の一つであり、情報幾何とも深く関係する。この問題に対し、2次元の場合には、前年度までの本研究ですべての負定曲率の極大ヘッセ多様体を構成していたが、本年度はその構成法を整理して見通しをよくすることによって、構成されたヘッセ多様体の分類を進展させることができた。ここで開発した手法を推し進めることで、2次元の場合の完全な分類を与えるとともに、成果の高次元化についても手がかりが得られることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古典的微分幾何における曲線の運動を記述する曲線の空間上の多重ハミルトン系の発見は、本研究の目的である古典的微分幾何と可積分系理論の関係深化に関する一つの進展であり、今後の研究の基礎として重要である。また、古典的微分幾何の一分野であるアフィン微分幾何やその応用としてのヘッセ幾何に関しても、新たな題材の開拓や成果の積み重ねができている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究が順調に進行していることから、連携研究者の役割分担は特に変更せず、これまで通り1~2か月に一度程度の研究打ち合わせ・成果報告により研究を推進する。ただし、平成23年度の研究成果に鑑み、研究代表者は特に、 1.多重ハミルトン系としての記述をより多くの曲線の運動に対して与え、それらに共通する統一的な原理を明らかにすることによって古典的微分幾何と可積分系理論の進展に資すること 2.2次元定曲率ヘッセ多様体の分類を完成させること。 を平成24年度の最重点課題として研究活動を行う計画である。
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