研究課題の最終年度として、古典的微分幾何とその応用に関してこれまで本研究組織によって得られた成果を精査し、それぞれの位置づけを相互の関係をより深めるという観点から再考した。その結果は現在総括中であるが、アフィン撞球・射影撞球の可積分系的・非可積分系的理論の構築に関して発展させるべき課題を見つけるなどのことができている。 また、アフィン微分幾何・情報幾何において重要な対象である統計多様体の一般化を次に述べる観点・動機から研究した。統計多様体のうちで、1-共形平坦と呼ばれる性質を満たすものの上には、(幾何的)ダイバージェンスという非対称ではあるが距離関数の二乗に類した性質を持った二点関数が構成されることが知られている。ダイバージェンスは、平坦な統計多様体(ヘッセ多様体)に対しては情報幾何において標準的ダイバージェンスと呼ばれているものと一致し、統計多様体の研究や応用において非常に重要な道具となっているが、その理由の一つとして、ダイバージェンスにより定められる一点からの「等距離」面がその点から発する任意の測地線と直交しているという、リーマン幾何におけるガウスの補題に相当する主張が成り立つことがあげられる。そこで、本研究では捩れを持たないアフィン接続とリーマン計量の組が与えられた多様体に関して、ガウスの補題型の主張が成り立つような二点関数が存在するための条件を考察し、特に次元が3以上で、与えられているアフィン接続が平坦である場合について、アフィン接続とリーマン計量の組が満たすべき条件をつきとめた。ただし、この条件の意義については未だ十分明らかでない部分もあり、この結果を深く探究し、さらに与えられているアフィン接続が平坦とは限らない場合に拡張することは今後の大きな課題である。
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