研究概要 |
HermannがHermann作用を提唱したのは元々は超極作用の例としてではなく,変分完備な作用の例として構成した.変分完備性の概念はBott-Samelsonにより提起された概念で,かれらはコンパクト対称空間のイソトロピー作用が変分完備になることを示し,モース理論を対称空間に応用した.後の幾何学者により対称空間への等長変換群の作用に関しては, 変分完備性と超極作用とが同値になることが示された.一方,ケーラー多様体に正則等長変換群が働いているとき,この作用に関する複素構造を反映した超極作用に当たるものは定式化されていないと思われる.そこでこの定式化のための準備をした.上のように考えると超極作用に当たるものの定義を与える代わりに,変分完備性のケーラー幾何版の定義を与えても良いと思われる.変分完備の定義はここでは省略するが,キーワードは測地線とヤコビ場で,キリングベクトルと測地線の速度ベクトルとの内積が時刻に依存しない,という性質に基づいている.すると,ケーラー幾何における測地線の代用品は標準電磁場に関する荷電粒子の運動であろう.正則キリングベクトル場と荷電粒子の運動の速度ベクトルの内積は時刻に依存しない定数にはならないが,運動量写像を用いるとこの部分の補正ができることがわかった.また,運動量写像が存在するための必要十分条件を見出すことができた.この研究は現在も進展中である.
|