研究概要 |
(1)アフィン不変な4項系として,アフィン幾何AG(2n,4)の平面全体がなす2-designを考え,このデザインのやはりアフィン不変な部分デザインへの分解について研究した.この研究の成果は,既知の分解よりも多くの部分デザインに分割できるという意味で,特に量子ジャンプ符号や秘密分散法などへの応用が期待できる.また,これまでは,実際に分解したときの部分デザインの数の厳密な評価はなされておらず,本研究において示した乗法的指標に関するWeil和の計算は,今後様々なところで役立つと思われる.特に,光直交符号や衝突回避符号の自己相関や相互相関の評価に使うことができると予想している.なお,この研究で用いた手法は,平成22年度に行ったAG(2n,3)の平面全体がなす2-designの分解で用いた手法とは異なるものであり,この手法によりAG(2n,3)に関する昨年度の結果よりも更に多くの部分デザインに分解可能であることを示すことができた.この結果は現在投稿準備中である. (2)重み3の最適な衝突回避符号の構成については,本研究代表者らにより平成22年度に偶数符号長に関しては完全に解決したが,符号長により構成法が細分化されている上,構成に必要となるSkolemタイプの整数系列も複雑で多岐にわたる.そこで,予備知識なしで誰でも具体的な符号語が入手できるよう,入力として符号長を与えると最適な衝突回避符号のすべての符号語を出力するwebアプリケーションを作成した.また,このアプリケーションは,位数を入力として与えることで各種Skolemタイプの整数系列のみを出力することもでき,衝突回避符号以外にも利用できる実用的なツールとなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光直交符号については,その基本となるデザインの構成や分割について研究を進めることができており,量子ジャンプ符号や秘密分散法への応用など,少し広範囲に適用可能な結果が得られていることから,当初の計画以上の結果を得ていると考える.一方,衝突回避符号については,奇数符号長の構成が未解決の整数論の問題と強く結びついていることが分かり,理論的な構成法を示すに至っていない.しかし,偶数符号長の最適符号を与えるアプリケーションが作成できたことは1つの大きな成果である.
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今後の研究の推進方策 |
光直交符号に限定せず,これまでに得られたデザインの構成や分解の手法を更に一般化することで,それらが活かせる応用分野の可能性を調査研究していく. 衝突回避符号については,奇数符号長の構成が未解決の整数論の問題と強く結びついていることが判明したため,理論的構成法の研究よりもむしろ,シミュレーションによる構成に重点を置くことにする.とはいえ,シミュレーションを行う中で,理論的な構成法を与えることのできる特定の符号長系列を見出すことができることも期待している.
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