平成24年度には主に①確率密度関数の2乗の推定問題,および②マウスの発する超音波の解析研究を行った. ①では,確率密度関数をまず kernel 関数を用いて推定した後,その得られた推定関数を積分することでU統計量の形になる4つの推定量を得た.そのときに kernel 関数と,窓幅と呼ばれる,ある点での値をどの範囲のデータを用いて推定するかの量の決定が必要である.理論的には窓幅の選択が重要であり,単純に確率密度関数の推定での最良の値は観測個数の -1/5 乗である.2乗の積分では,推定量の型により bias の次数は異なるが平均2乗誤差を通常の統計理論で得られる最良の次数 -1 にするのの窓幅の次数はかなり自由に選択できることが示された.実際のデータに適用するためにいくつかの分布に対するシミュレーションを行い,窓幅の次数は -1/3 程度が良いことが分かった.結果を計算機統計学会で発表し,その結果を基に論文を作成する予定である. ②では,いくつかの種のマウスの雄が雌に対して発する高周波超音波データを考察した.音声波を時間の関数とする回帰関数データと見なす.データにはバックグラウンド・ノイズが含まれるので,高速フーリエ変換した後,高周波部分における誤差変動を削除した.得られた高周波成分を実際に発せられた音声と見なすための検出法を開発し,関数データと見なしてその形の分類法を提案した.さらに,高周波成分が複数平行しているかどうか(ハーモニック)かどうかの解析を行った.得られた波形の分類法,関数と見なせる基準,波形のジャンプの分類に関する知見を国際会議で発表し,論文にまとめる予定である.
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