連続時間の確率過程の中では、ブラウン運動に次いで重要とされる、安定レヴィ過程を研究した。二次元安定レヴィ過程に関して、ポテンシャル理論に登場するいくつかの量を、汎関数で変形したものを解析し、それらの間の関係式を導いた。この関係式の応用として、二次元安定レヴィ過程が平面内の直線に初めて到達する場所の分布を特定した。それは、密度がレヴィ指数を含む簡便な公式で与えられるような確率分布だった。二次元ブラウン運動の場合には、平面内の直線に初めて到達する場所の分布がコーシー分布であることは、有名だったが、この公式はその場合を真に含む拡張でもあり、コーシー分布の必然性の説明をも与える。さらに詳しく、汎関数で変形したポテンシャル諸量について、通常のポテンシャル理論の枠組みを、どのように変形して適用すれば、一貫した体系になるかを調べた。この研究成果を、雑誌論文として発表した。 また、二次元安定レヴィ過程が平面内の半直線に初めて到達する場所・時刻・半直線の反対側での局所時間の同時分布を研究した。安定分布の指数によって決まる定積分(公式集に載っていない}を含む漸近評価を得た。この研究成果を、学術雑誌に投稿・改訂しており、審査委員の最終意見を待つ段階である。 引き続いて、1/cosh(x)の部分分数展開の確率論的解釈と拡張を研究した。ブラウン運動の初到達時刻・場所の確率分布は、初等関数との関連があることが、よく知られている。そこではラプラス変換・フーリエ変換により得られる1/cosh(x)の部分分数展開の等式が、強マルコフ性の見地から解釈される。ブラウン運動を安定レヴィ過程に取り替えた場合でも、いくつかの等式は同様に成立することを導いた。この研究成果は、投稿準備中である。
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