研究概要 |
本研究は,確率論の新たな源泉を,応用分野ではなく,数論という純粋数学の中に求めるところに特長がある.具体的には(1)数論的関数のランダム化,(2)一様分布列のランダム化,(3)数論的極限定理を有限整アデール環上の確率論的極限定理として捉えること,などである 以下,今年度中に掲載確定となったT.K.Duy氏(本研究代表者の研究室の大学院生)との研究成果2件について概要を述べる.これらは上記(3)に属する研究である 1. どの素数のk乗でも割り切れない整数をk-th power free integerと呼ぶ.1からNまでの整数のうちk-th power freeであるものの割合はN→∞のとき,1/ζ(k)に収束する.ここでζはリーマンのゼータ関数である.我々はこの収束の速さを詳しく計算し,有限整アデール環上の確率論的極限定理として捉えることを目標にした.T.K.Duy氏は,その研究において決定的な計算方法を見出して収束のオーダーを完全に決定し,その結果を学会発表(2010/9/15)し,さらに論文On the distribution of k-th power free integersにまとめた 2. 極限周期的算術関数と有限整アデール環上の確率変数の間に1対1対応があることは知られていたが,我々はその対応および逆対応を具体的に完全な形で書き下した.その結果,加法的算術関数や乗法的算術関数の「平均」に関する古典的な議論が有限整アデール環上の積分として統一的に理解できることが分かった.また,T.K.Duy氏はそれらの関数のフーリエ級数がL^σ-収束することを証明した.これらの結果は,T.K.Duy氏の論文LImit-periodic arithmetical functions and the ring of finite integral adelesにまとめられた
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