本研究は、確率論の新たな源泉を応用分野ではなく数論という純粋数学の中に求めるところに特長がある。具体的には(1)数論的関数のランダム化、(2)一様分布列のランダム化、(3)数論的極限定理を有限性アデール環上の確率論的極限定理として捉えること、などである。 以下、今年度中に出版あるいは掲載確定となったT.K.Duy氏(本研究代表者の研究室の院生、のちに学振特別研究員)との研究成果のうち二つについて述べる。
1.Riemann zeta関数と有理整数環上の指標からなるDirichlet級数は数論の重要な研究対象である。これをさらに拡張した一般Dirichlet級数は虚軸に平行な直線上では概周期的となり適切なコンパクト化の下でHaar測度を持ち、それに関して一般Dirichlet級数はFourier級数の拡張と考えることができる。この一般Dirichlet級数について、2乗和が収束する係数を持つFourier級数がほとんどいたるところ収束すること(Caresonの定理)が、まったく自然な条件の下で成り立つことが示せた。
2.前項は一般Dirichlet級数の虚軸に平行な直線上での性質であったが、それを複素平面上の領域(当該関数が正則となる領域、あるいは有理型となる領域)で考えて確率論的考察を行った。Laurincikasの先行研究における係数の一次独立性を外した時の考察を詳しく行った。
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