研究課題/領域番号 |
22540132
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
富崎 松代 奈良女子大学, 理学部, 教授 (50093977)
|
研究分担者 |
森藤 由美 奈良女子大学, 理学部, 特任助教 (80611128)
飯塚 勝 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (20202830)
|
キーワード | 広義拡散過程 / 双一般化拡散過程 / 出生死滅過程 / モランモデル |
研究概要 |
1.尺度関数、速度測度関数が退化していくような広義拡散過程の列の極限について考察を行った。拡散係数が退化し、ドリフト係数がある点でヘルダー連続である場合、尺度関数列と速度測度関数列の極限はこの点で共通の不連続性を持つ。Oguraによる双一般化拡散過程の理論(1989)を適用できないために、新たな視点から極限過程について考察を行い、これまでと異なる収束の状況を示した。 2.一次元広義拡散過程と球面上のブラウン運動の斜積として表現される確率過程の時間変更過程の列の極限過程として、異なる球面間をジャンプする確率過程が出現する場合がある。この極限過程のジャンプ測度を求める手法について考察した。 3.集団遺伝学における代表的な確率モデルであるモランモデルは出生死滅過程として定式化される。このモデルは拡散モデルで近似されるが、拡散モデルのweak mutation極限として得られるマルコフ過程を、様々な場合に直接的にモランモデルの極限として得ることができるかの考察を行った。その結果、weak selection極限とmoderate selection極限では、モランモデルの尺度関数と速度測度関数が広義拡散過程の穴度関数と速度測度関数に収束することを用いて、モランモデルの極限は対応する拡散モデルの極限と一致することを証明した。一方、strong selection極限ではモランモデルの尺度関数と速度測度関数が双一般化拡散過程の不連続点を共有する非減少関数に収束することを示した。さらに、集団遺伝学における互助的中立突然変異の拡散モデルの境界近傍での挙動に関する考察を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
尺度関数と速度測度関数が共通の不連続点を持っており、双一般化拡散過程の理論をそのまま適用することが出来ない場合に、確率過程の収束の状況と極限過程について考察する手法の手がかりが得られている。 集団遺伝学におけるモランモデルのweak mutation極限について、weak selectionとmoderate selection極限の場合についてはすでに結果を得ている。一方、strong selection極限の場合についても予備的な結果は得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
拡散係数が退化しドリフト係数が有界ではない場合に、双一般化拡散過程列の収束について考察をさらに進める。尺度関数と速度測度関数が共通の不連続点を持つ場合に、半群のラプラス変換列の収束の状態について考察する。また、集団遺伝学におけるモランモデルのSSWM(strong selection and weak mutation)極限について考察する。このとき、モランモデルの尺度関数と速度測度関数の極限は共通の不連続点をもつので、尺度関数と速度測度関数の収束から確率過程の収束は保障されない。尺度関数と速度測度関数の極限は双一般化拡散過程の尺度関数と速度測度関数である。この場合に対して、確率過程の収束の状況と極限過程を明らかにする。
|