集合値最適化問題とは、実社会における多様な価値観を集合値写像によって自然に表現することが可能な問題であり、集合値計画法の研究は理論、応用の両面から発展が強く望まれている問題である。本研究では、解を求める際に重要となる制約想定について調査し、この結果に基づいた集合値計画法の双対理論、および求解法について研究するのが目的である。 集合値計画法において、完全な形での双対理論の構築および適切な制約想定を導入し最適性条件を導くためには、凸集合の埋め込み空間(線形空間)とそこに導入する位相、および双対空間が最も重要な役割をなす。従来の研究結果では双対空間を具体的に記述することが難しかったため、双対理論の記述が困難であり、応用面では不十分な結果であった。これらのことを鑑み、平成22年度は次の研究を行った。 ●集合を基底として考えた新しい埋め込み空間を導入した。この埋め込み空間において、凸集合同士の「差」が表現可能となり、凸集合族が特殊な線形空間に埋め込まれることとなった。この埋め込み空間について、いくつかの性質について考察した。 ●上記結果に基いて、集合値問題に対する制約想定を導入した。特に、まずは最弱な制約想定を見出し、最適性の条件に関する理論を導いた。 これらについて連携研究者との意見交換、国内外の研究者との研究打ち合わせ、研究集会・国際会議における発表等を通じて、多くの研究者から広く意見を聞くことができた。
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