研究概要 |
本年度は,展開モデルのランキング・パターンの問題を中心に扱った,1次元の場合や余次元が1の場合の展開モデルのランキング・パターンについては,これまでの研究で既に解決した問題もあるが,未解決の問題も多く残されている.今年度はそのうち,余次元が1の展開モデルの本質的に異なるランキング・パターンの問題に取り組んだ. ランク付けされるべき複数の対象と,それらをランク付けする個人とが,ともに同一のユークリッド空間内の点として与えられているとする.個人はこのユークリッド空間内において,自分により近い対象から順に(上位に)ランク付けすると考えるのが,計量心理において用いられる展開モデルである.ユークリッド空間の次元が対象の数より2だけ小さい場合,展開モデルは余次元1であるという. 展開モデルにおいて,複数の対象を固定して,個人を動かせば,様々なランキングが得られる.このランキングの集合を,与えられた対象たちの組のランキング・パターンと呼ぶ.さらに,対象たちの組自体をユークリッド空間内で動かせば,様々なランキング・パターンが得られる.対象たちの組を自由に動かすことによって,どれくらい多様なランキング・パターンが生成可能か,というのが,ランキング・パターンの問題である. 余次元1の場合,ランキング・パターンの問題は,過去の研究で基本的には既に解決していた.しかし,単に対象たちのラベルの付け替えにより互いに得られるランキング・パターンたちは,本質的には同じものと考えられる.この意味で本質的に異なるランキング・パターンの数を調べることが,未解決の問題として残されていた.今年度はこの問題に取り組み,それを解決した.その際,この問題をより一般的な超平面配置の問題として扱い,Coxeter群の作用の元で不変な超平面配置の問題としてより一般的な結果を得た.ここで得られた結果は,論文Arrangements stable under the Coxeter groups, METR 2011-10としてまとめた.
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