散逸系においては、相対的な意味において、無秩序状態を含む他の大多数の状態より非常に安定的な低エネルギー状態で、かつ、ほぼエネルギー的に等価ではあるが、微妙に違っているというような秩序状態が複数(無限個であり得る)存在していることがある。このような場合、無秩序状態に多少のホワイトノイズを加えた初期値から時間発展させた解は、空間局所的にはそのどれかの秩序状態のひとつに、急速に引き込まれた後、空間局所的にランダムに生成された秩序状態間に創られる“ディフェクト(欠陥)”部分(合金相転移問題などで見られるいわゆるグレインバウンダリーのようなもの)がせめぎ合いつつ、微妙ではあるが、よりエネルギーの低いほうに向かって時間発展し、かつ、そのようなディフェクト部分を解消するように運動していく現象が、往々にして、見られる。私は、このディフェクトの解消運動を、ある種の進行波解と見做して、その存在や一意性、さらにはよりアドバンストな数理的性質を数学的に研究した。本年度は、本課題の最終年度であり、関連した問題として、ルジアート=レフィバー方程式にホワイトイズを入れた確率微分方程式を考え、その安定定常解の周りにおける、大偏差原理を考えたりもした。現段階で、ある程度の結果を得ており、今現在、投稿準備中である。
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