昨年度は、浸透問題、あるいはダムの問題と呼ばれる自由境界問題に対する反復について進展があった。まず、Hadamard変分と呼ばれる、領域の境界の摂動に対する変分を計算した。得られた結果と名古屋大学の畔上教授が提案している力法を組み合わせることにより、自由境界問題に対する効率がよい反復解法を設計した。計算の過程や数値実験をまとめて論文として発表した。特徴的だったのは、第2 Hadamard変分を計算すると、境界の平均曲率が出てきたことである。この辺の事情は、まだ完全に理解できていない。 また、昨年度にリーマン多様体の基本的な事項の調査が進み、リーマン多様体上のラプラシアン、Ricciテンソル、Ricci作用素について、完全に理解できた。特に、2次元の場合に徹底的に基礎的な計算を行い、以下のことが分かった。2次元リーマン多様体上では、(1)Ricciテンソルは、計量をガウス曲率倍したものである。(2)Ricci作用素は、接ベクトルをガウス曲率倍するという操作を意味する。今年度は、これらの成果を用いて、いよいよリーマン多様体上の有限要素法をプログラムする予定である。
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