研究課題/領域番号 |
22540140
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
中野 史彦 学習院大学, 理学部, 教授 (10291246)
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キーワード | ランダムシュレディンガー作用素 / 準位統計 / 確率微分方程式 / βアンサンブル |
研究概要 |
遠方で減衰するランダムポテンシャルをもつ1次元のシュレーディンガー作用素を考え、次のことを示した。減衰するオーダーをαとおくと、 (1)αが1/2より大きいとき、スペクトルは絶対連続になるが、このときスケールされた固有値のなす点過程はクロックプロセスになることを前年度に示した。今年度はこの場合に固有値同士の順位間隔をスケールしたものがガウス系に収束することを示した。 (2)αが1/2に等しいとき:スペクトルに特異連続な成分が現れる。このときにスケールされた固有値のなす点過程を考え、それのラプラス変換を特徴付ける式を与えた。これはrelative Prufer phaseを呼ばれるもののスケール極限が、ある特別な確率微分方程式の解であることを示すことにより与えられる。一方、Killip-Stoiciuはβアンサンブルと呼ばれるもののスケール極限のラプラス変換の特徴付けを与えており、私達の結果はこれと一致する。よってこの点過程のスケール極限はβアンサンブルのそれと一致することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この作用素のスペクトルは、ポテンシャルの減衰度により3つに場合分けされるが、そのうち2つ場合について準位統計を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ポテンシャルの減衰度のαがl/2よりも小さい場合において、対応する準位統計がボアソン過程に収束することを証明する。 (2)電場の入ったランダムシュレディンガー作用素について、その自己共役性及び準位統計を考える。 (3)ランダム行列理論に現れる各アンサンブルとの関係を更に明らかにすること、さらに固有値同士のスペーシングについても調べる。
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