医学データなどには、経時的に観測されるものがあり、そこに何らかの構造を仮定できることがあるが、そこには個体ごとの変動も考慮にいれて考察されることがある。本研究では、繰り返し測定データに対する混合効果をもつ非線形モデルが平行である場合の水準差の同時推測について考察した。この問題は、Srivastava (1987) により提案された多変量解析におけるプロフィール分析を適用したものであるが、モデルが非線形であるため精確な推測は困難である。モデルのパラメータは、モデルを1次のテーラー展開によって近似することで推定をし、水準差については2つの推定量を提案し、平均2乗誤差をシミュレーションにより検証した。水準差の同時比較に対して平均2乗誤差が良い方を推定量として用い、ペアごとの同時信頼区間を近似的に与えた。与えた近似の良さをシミュレーションにより検証し、良好な結果を得た。さらに、線形モデルではあるが、個体ごとの誤差分散が異なる場合のパラメータの推定問題についても考察し、それを二標本問題へと拡張した。これは多変量ベーレンス-フィッシャー問題としてとらえることができ、その解決法として主に3つのタイプの近似が与えられている。これらを線形繰り返し測定モデルに適用して、パラメータの差の信頼領域の近似を与え、シミュレーションにより検証および比較をした。 また、応用として歯学データに対する多重比較などの統計解析も行った。さらには、繰り返し測定データの基礎となる多変量統計解析における故塩谷教授の業績をまとめた。
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