研究概要 |
全4年間の第2年度である今年度は、初(前)年度に焦点を絞って研究した2次数理計画問題を動的計画法自身の動的最適化問題として捉えなおし、その最適解である最適値関数と最適政策を求め、種々の性質を明らかにした。具体的には、所与の(主)動的計画に対してその双対動的計画を導き、両動的計画が表現する動的最適化問題---最小化問題と最大化問題--をベルマン方程式によって最適解を求め、両最適解の間に成り立つ双対性を明らかにした。特に、有限段過程ではフィボナッチ双対性が(i)相補,と(ii)シフト,の各々について、無限段では黄金双対性がやはり(i),(ii)の各々について、それぞれ成り立つことを示した。(i)は有限段ではいわば4対6のフィボナッチ比、無限段では1対1.618の黄金比にそれぞれ基づいている。(ii)は有限段では6対4のフィボナッチ比、無限段では1.618対1の黄金比になっている。これで最適政策および最適値関数の「フィボナッチ」、「黄金」の概念を2つ導入したことになる。以上は離散時間上の動的最適化問題に対するベルマン方程式による最適解の導出による成果であるが、これと対照的に古典的な変分法に基づくオイラー方程式による最適解の導出も行い、導出過程、最適解の比較・検討を行った。さらに、このような最適解を求める過程で第3の方法ともいうべき「不等式による接近」が適用可能であることが判明した。この方法では、特定の不等式---我々の研究対象である線形制約(ダイナミックス)下の自乗(平方)評価の最適化の場合は、相加・相乗平均(算術平均・幾何平均)不等式---1本を上手く活用すれば、瞬時に双対問題(過程)が導けて、同時にその最適解も得られることが判明した。この意味で交付申請時に意図した「解析解」が3つの方法(1)ベルマン方程式、(2)オイラー方程式、(3)不等式で導かれことになった。しかもこの3つの方法は本研究の多様性と深化に繋がり、経済動学を中心とする動的最適化問題の解明に資するものであることが判明した。 今年度は、これらの成果を1国際会議、2日本数学会、3京大数理解析研究所、4その他の研究集会、などで報告してきた。
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