本研究の前段でレヴィ過程の filtration をインサイダー情報で拡大した filtration の下でのcompensator を求めることができた.インサイダーの情報はいろんな場合が考えられ、それぞれに対しての compensator が得られるが、満期の株価情報に別のレヴィ過程によるノイズが加法的に加わった、割合単純な場合は compensator の種々の計算ができる. K.Ito はユークリッド空間上でレヴィ測度に関し2乗可積分な関数に対しそのレヴィ過程による multiple Wiener integral を定義した.そしてその全体はレヴィ過程の生成する確率空間上の2乗可積分関数の全体の空間に一致することを示した.上述の割合単純なインサイダー情報の場合に Ito の手法を変形することによりユークリッド空間上のレヴィ測度に関し2乗可積分な関数に対し、この compensator による martingale での multiple Wiener integral が定義できることを示した.そしてそれが拡大した filtration のもとでの2乗可積分関数になることを示した. Kunita は Ito の結果を用いてレヴィ過程の filtration のもとでの2乗可積分マルチンゲールの表現を得ている,その方法とパラレルな議論を展開することにより拡大した filtration のもとでの2乗可積分マルチンゲールを上述の compensator によるマルチンゲールに関する確率積分として表現することができた. この結果を用いることにより既に部分的に得ている最大期待対数効用の相対エントロピーによる表現を完全にすることが期待できる.
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