研究課題/領域番号 |
22540147
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
服部 久美子 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (80231520)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 確率論 / 確率過程 / 極限定理 / 非マルコフ過程 / 連続極限 |
研究概要 |
一昨年度から、確率モデルの極限に関して新たな展開があった。いままで解析困難と考えられてきた、フラクタル上のループ・イレーズド・ランダム・ウォークとよばれる非マルコフ過程に関して、厳密な解析が可能となる、既存とは異なるモデルを開発した。ループをできた順に消していくのでなく、スケールの大きい順に消すのである。この消し方によると、フラクタル格子の自己相似性を利用して、ループ・イレーズド・ランダム・ウォークの連続極限の存在および、連続極限の確率過程の基本的な性質を証明した。25年度は、さらにこのモデルがLawlerの提唱したできた順にループを消す「標準モデル」と同値であることを証明した。 単に解析できるモデルを作ったのではなく、ループ・イレーズド・ランダム・ウォークの新しい解析方法を見出したことになる。この同値性がどこまで一般的に成り立つかは興味深い課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダム・ウォークからループを消して得られる確率過程は、一般にループを消す順序によって異なる確率過程になる。 シェルピンスキー・ガスケット上で、ループを大きい順に消すモデル(自己相似性を利用できて厳密な解析が可能になる)が、Lawlerが提唱し、ユークリッド空間で多くの結果が得られている標準モデルと同値であることを示したが、この結果はループ・イレーズド・ランダム・ウォークの新しい解析方法を見出したことになり、研究発表に対する聴衆の反応も良かった。
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今後の研究の推進方策 |
確率ランキング過程は、一列に並んだN個の粒子が、独立に、それぞれ固有のジャンプ率にしたがって列の先頭にジャンプする、というモデルである。大数の法則の描像の通り、無限粒子極限において、ランダムな現象から決定論的な運動を読み取ることができる。現実をさらによく反映させるため、粒子によって時間依存性が異なるモデルまで一般化した理論を構成した。さらに、位置依存性がある場合への一般化を試みる。 シェルピンスキー・ガスケット上のループ・イレーズド・ランダム・ウォークに対して、大きいループから消すモデルと標準モデルが同値であることを示したが、この同値性がどこまで一般化できるか、極限の確率過程の軌跡の幾何学的性質(ハウスドルフ次元より詳しい情報)、以前に研究を行っていた自己回避ウォークと今回のループ・イレーズド・ウォークを含む統一的なモデルの構成などに取り組んでいく。
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