研究概要 |
本研究初年度である平成22年度は,主に盗聴通信路用の符号化について基礎的な研究を一貫性を持ち順調に進めた.特に,派生的でありながら独立した研究テーマとしても価値のあるようなものを幾つか見出している.例えば,アファイン符号化器の基礎的な特徴量を見出し,それが符号の性能解析に極めて重要な役割を果たすことを定量的に明らかにした.この成果は,性能解析・証明を符号の信頼性(正確な伝達の能力)に限っても基礎的な成果であるが,本研究では安全性についてまでも,本研究の示唆する符号の定量的性能証明に成功しており,新たなアプローチを切り拓いたといえる.それらの成果は幾つかの研究会や学術会議で発表した.なお,これらの研究の土台となる成果として多項式時間構成可能であり漸近的に最適である盗聴通信路用符号を得ているが,平成22年度,この成果をIEEE ISIT 2010(米国電気電子学会情報理論に関する国際会議)において発表した.これらの成果や活動は忠実に研究実施計画に沿ったものである.実際,IEEE ISITにおいて発表した成果は連接法によって構成した盗聴通信路用符号の漸近的最適性を証明したものであるが,同計画では「この成果を機軸にWynerの予見した,あるいは彼の予見を超える符号化器の具現化に向け技術と理論の進展を図る.特に,設計指針を示唆するための基礎的考察に注力する.」とした.ここで,「この成果」はIEEE ISITでの発表内容であり,Wynerは盗聴通信路というモデルの提唱者である.そして,ISITの後,他の学術会議で発表した「アファイン符号化器の基礎的な特徴量」に関する研究は「符号化器の具現化に向け技術と進展を図る」こと,あるいは「基礎的考察」の一環として実施した.
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