研究概要 |
本課題では,代数的誤り訂正符号の一般化と見なすことができる「剰余符号(quotient codes)」を研究している.これはWyner(1975)が定式化したような盗聴下通信の問題に有効である.このWynerによる問題の定式化は「盗聴通信路(wiretap channel)」の名のもと最近再び脚光を浴びている.本研究は,これらの符号の設計規範の探求,構成,性能評価,理論的限界の解明などを主目的としている.特に,盗聴通信路の符号化器構成に関しては2006年に出願した基本的な符号化器の特許を本年度取得したことを踏まえ,基本的符号化器を複合的に組み合わせて(連接して)構成する連接符号化器についても特許申請をした(2006年出願分からの分割出願).この連接符号化器を研究対象とすることは研究提案に盛り込まれていたが,本年度は,連接符号化器の性能評価の精密化を進めた.その具体的な内容は以下の通りである.情報理論的なモデル盗聴通信路が注目を集めている.最近,このモデルにおいて,漸近的に最適な符号で明示的なもの,すなわち多項式時間構成可能な符号化器が最近著者によって見出された.この符号化器は連接符号化器である.また,この際用いた安全性の基準は盗聴通信路モデルの提案時の標準的なものであったが,これを強化した既知の基準(Csiszar1996)や更に強めた基準のもとでもやはり最適符号が多項式時間構成可能であることを証明し発表した(日本応用数理学会研究部会連合発表会).安全性基準はいずれも情報理論における相互情報量を用いたものである.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,符号の設計規範の探求,構成,性能評価,理論的限界の解明などに関する研究を進める.情報理論をはじめ,関連する様々の分野の研究動向や有用な研究内容を把握するため,学術会議にも積極的に参加する.
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