1. 無限回連続微分可能関数族におけるHilbertの第13問題の部分的解決について。 1900年にフランスで開催された国際数学者会議において総合講演を行ったHilbertによって提示された問題の一つである「多変数関数の重ね合わせ表現可能性について」という問題は、約50年後に、KolmogorovとArnoldによって、連続関数族の場合に解決されたが、「解析的多変数関数族」や「微分可能多変数関数族」など条件を変えることによって、様々な派生問題をもたらすことが知られている。本年度は、現時点で未解決であった「無限回微分可能多変数関数族」の場合に「強表現不可能性」が成り立つことを示す具体例を構成することに成功した。 2. Arzela-Ascoliの定理の拡張について。 コンパクトな定義域を持つ関数族に、一様ノルムを定義して構成される連続関数空間の部分集合がコンパクトであるための必要十分条件は、「閉集合かつ同程度連続性を有すること」という結果は、Arzela-Ascoliの定理として知られているが、本年度は、「同程度微分可能性」という概念を導入して、コンパクトな定義域を持つ有限回連続微分可能関数族と無限回連続微分関数族のそれぞれの場合に対するコンパクト性のの特徴づけを行った。具体的には次のようなものである。 2-1. コンパクトな定義域を持ち、ソボレフノルムを導入した有限回連続微分可能関数バナッハ空間の部分集合がコンパクトであるための必要十分条件は、「閉集合かつ同程度有限回連像微分可能であること」である。 2-2. コンパクトな定義域を持ち、ソボレフノルムから構成されるフレシュ距離を導入した無限回連続微分可能関数フレシュ空間の部分集合がコンパクトであるための必要十分条件は、「閉集合かつ同程度無限回連像微分可能であること」である。
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