至誠賛化流の門人の作成した問題を長年にわたり集録した『淇澳集』の分析を通して,本流派が難問を集めることで威信を向上させようとしたことがわかった.しかし数学上の格段の発展は見られず,長期的にわたり類型的な趣味としての数学であることを確認した. 近世日本の数学界を代表する数学者,関孝和,建部賢弘,および建部賢明は『大成算経』20巻において独自の数学観を披瀝すると同時に現代にも通じる数学上の技法を駆使したが,有効な記述手段を持っていなかったため,その記述は難解である.そこで本課題では本書の詳細な解読作業を行った. また岩波書店から刊行予定の関孝和全集に向けてテキストの訓読,現代語訳なども行なった.
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