研究課題/領域番号 |
22540156
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
細野 雄三 京都産業大学, 理学部, 教授 (50008877)
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研究分担者 |
辻井 芳樹 京都産業大学, 理学部, 教授 (90065871)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 反応拡散系 / 進行波解 / 侵入過程 / 餌食と捕食者モデル / 2種競争系 / 侵入速度 / 特異摂動法 / 相空間解析 |
研究概要 |
今年度は昨年度と同様、古典的なLotka-Volterra型の餌食・捕食者系モデルの進行波解の全体像を明らかにすることを主たる目標として以下の研究を行った。 1.餌食を追跡する捕食者の侵入を記述する進行波について:(1)捕食者の拡散係数がゼロのとき、進行波解の速度をゼロに近づけると、進行波の形状は有界でなくなることを形式的な特異摂動法で明らかにしたが、その厳密な証明を完成するには至っていない。引き続きその解析を追求している。(2)餌食の増殖項が非常に大きい場合、それを摂動パラメータとした形式的摂動解析により解を構成したが、その結果を陰関数定理により厳密な証明を与えようと試みている。線形化作用素の性質はほぼ明らかに出来たが、まとまった結果を得るまでには至っていない。来年度中には完成したいと考えている。 2.餌食と捕食者が、開放空間に同時に侵入する過程を記述する進行波解について:昨年度までの研究で餌食の拡散係数が十分小さいとき解析的特異摂動法により単調でないプロフィールをもつ進行波解が構成できることが解っているが、その結果の厳密な証明は構成した解の正値性の証明がまだ成功していないため完成していない。そのため、幾何学的特異摂動法による証明の可能性も考慮して研究中である。 3.単安定2種競争系において、強い種に遺伝子的変異がある場合にその遺伝子的変異の集団内での空間的分布が侵入過程において、弱い種との相互作用によりどのような影響を受けるかを、数値シミュレーションにより考察した。その結果、進行波の速度が線形予測により得られる速度と一致するとき(Pulled front)とそうでない場合(Pushed front)で異なる事が解った。本研究はLionel Roquesとの共同研究であり、次年度も引き続き行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の項で述べたように、十分な厳密な結果を得る事ができず、年度の始めに考えていたように結果をまとめて論文として公表することができなかった。その背景には、本研究と関連する研究が近年多く発表され、それらの研究を検討することに時間を取られた事にも一因がある。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には、昨年度と同様理論解析に重点を置き、解析的特異摂動法だけでなく幾何学的を手法も含めて進行波解の存在と一意性の問題を研究する。我々の研究と密接に関係した研究がこの数年多く見られるようになってきているので、可能な限りそれらの研究との関係を検討し、本研究の独自性を確保して行くつもりである。
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