24年度は佐藤のグラスマン多様体の元に群を作用させたときに,生成関数の変換を記述するモノドロミー行列を定義し,その性質を調べた.これは,シフト変換に関するRemlingの定理をKdV力学系に拡張する際に必要になる.これにより初期関数のクラスが減少あるいは振動する場合も含めた場合に定義されているKdV力学系に対してRemlingの定理を示すことができた.したがって初期関数をポテンシャルに持つシュレーディンガー作用素が絶対連続なスペクトル成分を持つ場合に,KdV方程式の解の時間無限大での挙動が絶対連続スペクトル上での無反射ポテンシャルのそれに一致するという,KdV方程式の解に対する新し漸近定理が得られた.この結果についてはプレプリントをarxiv.math.に掲載している. さらに,この結果はKdV力学系の不変集合についても大きな情報を与え,結果的に不変集合はある集合上で無反射的になることがわかる.この延長上で重要と思われる問題は,例えばスペクトルが純絶対連続である場合(したがってスペクトル上では無反射)に,KdV力学系で不変確率測度は唯一かという問題がある.これはポテンシャルの概周期性より弱い性質を示すことになり,このような一般的な形で証明できる可能性があると予想している. このほかに関連する研究として,減衰するランダムポテンシャルの場合に固有値分布の極限分布についての結果を専門誌に投稿して目下レフェリーの審査を受けている.
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