本研究は Gelfand 変換像及び Helgason-Wang 変換像を特徴付ける事により、可換 Banach 環の分類を行い、その本質を探る事が主目的であった。実際これらの特徴付け問題から可換 Banach 環を4つのクラスに分類したのであるが、我々はこの分類に関連して、主として以下の分野で実績をあげた。 一つは北大名誉教授井上純治氏の協力を得て、非コンパクト非離散 LCA 群上の Fourier 環における Segal 環で、 BSE でも BED でもないものを発見した。これまでそのような Segal 環は発見されていなかったので、この成果は今後の Segal 環の解明に大いに役立つものであり、この分野での今後の発展が期待される。 一つは放送大学の中筋康夫氏の協力を得て、合成関数の観点から数列に関する Chebyshev の不等式に新解釈を与え、その応用としてある条件のもとで擬算術平均関数が凹である事を示した。これは凸解析の分野で更なる発展が期待される。 一つは東邦大の小林ゆう治氏等の協力を得て、Banach 空間上の一般化された加法的写像の代数的解明及びその Ulam 型安定性定理を得た。これは基本的には Banach の不動点定理を応用するものであるが、一般の Ulam 型安定性問題の発展に寄与すると考えている。 これらの結果はしかるべきジャーナルまたは国際会議録に掲載または掲載予定である。詳細は研究発表の欄を参照されたい。
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