研究概要 |
本年度は,まず当初の計画通り,これまでの研究成果の発表,及び非線形理論に関する新たな手法の開発に向けた意見交換を目的に,ドイツ国,ドレスデンで開催された国際会議8th AIMS Conference on Dynamical Systems, Differential Equations and Applicationsに出席した(2010年5月25日から28日まで).さて,今年度の研究成果は正値解の分岐連続体の漸近挙動に関するものである.非線形境界条件下において人口動態論から由来する非線形楕円型境界値問題を考察し,その正値解の集合が解空間とパラメータ空間の直積空間においてどのように現れるかを調べた.特に漸近挙動を与える表示式の高次の項を方程式に含まれる係数を用いて厳密に与えた.漸近挙動に加えて,この表示式に基づいて正値解の一意性と安定性を論じた.これらの考察では未知関数のあるスケール変換が本質的な役割を果した.この変換によって得られた非線形問題を有限次元分岐方程式に帰着させて解いた.この成果について2010年9月28日に洞爺解析セミナーにおいて口頭発表した.また論文にまとめて微分方程式の国際学術誌に投稿した.なお投稿論文は現在査読中である.その後方程式に内包するパラメータが十分に大きいときの正値解の一意性を考察した.現在のところわかったことは,この一意性定理が確立されれば,既に証明された大域的分岐連続体の存在から発展させて,正値解の多重性の分類定理がパラメータの臨界値を用いて定式化されるということである.
|