研究課題/領域番号 |
22540179
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小原 功任 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (00313635)
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キーワード | 超幾何関数 / ホロノミック系 / 計算数学 / 代数統計 / グレブナー基底 / 微分差分方程式 |
研究概要 |
本課題の研究目的は、多変数の超幾何関数に対し関数等式、特にパラメータつき変換公式を探索することである。具体的には、多変数超幾何関数の局所的性質(微分方程式)を利用して、関数等式の組織的探索を行う。関数等式とは2つの見掛けが異なる多変数解析関数の同一性のことであるから、 ・ある点での関数値が一致 ・偏微分方程式系が一致 が言えれば、同一の関数であることが分かるが、実際には偏微分方程式系が一致することを証明するのは、大変な計算になる。本年度は差分的手法により、関数等式とある種の代数曲面(一変数の場合)との間に関係があることが分かった。次年度は引き続き組織的探索により、この関係を調べていく予定である。また本研究では自作の高性能グレブナーエンジンyangを使用し、計算機代数的手法を援用しながら、この計算を遂行する。本年度は、初年度に引き続いて、グレブナーエンジンyangの機能を拡張し、また大規模計算に耐えうるように性能を向上させる作業を行った。また、並列計算への応用を考えて、ベースとなる数式処理システムRisa/Asirの並列計算機能を強化するための作業を行った。超幾何関数はホロノミック関数と呼ばれる関数族の一部をなすが、yangの拡張された機能の応用として、代数統計に由来するSO(3)上のウィシャート分布に付随する積分で表示されるホロノミック関数(行列変数超幾何関数に対応)に対して、その一階偏微分方程式系を求めた。さらにその偏微分方程式系を用いて、極小点を導出する記号的数値解析アルゴリズムを開発した。この極小点導出は統計学におけるある種の最尤推定問題の解決に相当し、本研究課題の統計学に対する応用でもある。この結果については論文投稿中である。また、われわれの手法の関数論的な応用として、行列スペクトル分解に対する新しい計算法を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、組織的探索により多変数超幾何関数の関数等式の発見とその性質を明らかにすることであるが、今年度までの研究において、関数等式とある種の代数多様体との関連が明らかになるなど、研究が順調に推移していると判定できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、組織的探索により多変数超幾何関数の関数等式の発見とその性質を明らかにすることであるが、今年度までの研究において、差分的手法により、関数等式とある種の代数多様体との関連が明らかになるなどの結果が得られている。今後は代数多様体のradical parametrizationによって、これら代数多様体のパラメータ付けから、関数等式の機械的導出へと研究を進める予定である。また、本研究課題を遂行する上で、当初は予定になかった代数統計における最尤推定問題への応用や、有限次元線形作用素のスペクトル分解のための関数論的アルゴリズムの開発・プログラムの実装など、応用が広がっているので、その方向への応用についても研究していく予定である。
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