研究概要 |
本研究の第一の目的は,超可積分系を定義する第一積分のつくる写像の特異点近傍における解の挙動を追求することにある。その観点から本年度は,(1)ハミルトン系の一般の特異点近傍における標準形を得ること,ならびに(2)一般のベクトル場の超可積分性をどのように定義し,その特異点における標準化問題に応用するか,の2点について研究を進めた。その結果,以下の成果を得た。 (1)については,自由度dのハミルトン系のk(<d)次元不変トーラスに対して共鳴度を定義し,それと第一積分の個数の間にある種の関係が成り立つ場合にハミルトニアンに対する標準形を求め,作用一角変数とバーコフ標準化に付随したバーコフ変数を合わせたシンプレクティック座標によって解の求積が可能になることを示した。これは,超可積分系の摂動問題を統一的な観点から扱うための基礎になると期待される。 (2)については,一般の解析的ベクトル場の可積分性を第一積分(不変量)と可換なベクトル場(対称性)の両面から捉えることで,ベクトル場の超可積分性から共鳴平衡点の近傍で収束する標準化変換が得られ,得られたベクトル場の標準形は求積可能なものになることを示した。これはZungによる結果の超可積分系への拡張と考えることができるが,結果が成り立つには平衡点における線形部分に制限が必要な点など,将来に向けての問題も明らかになった。
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