研究概要 |
不変部分空間問題は作用素論において最も重要な未解決問題の1つである. それは可分なヒルベルト空間上の全ての有界線形作用素は自明でない不変部分空間を持つかという問題である. 本研究は, この問題を作用素空間や半群の理論と結びつける代数的手法で考察することにより, その過程で生じる多種多様な問題を探求することを目的とした. そのために、研究分担者と協力して作用素論・作用素環論的アプローチ、バナッハ空間の理論からのアプローチ、そしてヒルベルト空間の理論からのアプローチと多角的な方法により理論の発展を試みた。 その結果として、不変部分空間の構造に関連して von Neumann 環における分解定理や新たな不等式の開発、正規でない作用素のクラスの構造定理、バナッハ空間の幾何学的な構造理論、そしてヒルベルト空間の部分空間の配置等、関連する多くの結果を得ると共に、不変部分空間の構造の理解も深まった。不変部分空間問題は、それ自体興味深い問題であるが、他の理論への発展にも大きな影響を与えるものである。このように、研究計画に沿った一定の成果を得ることが出来たが、今後も不変部分空間問題の多角的考察を精力的に継続する必要がある。
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