研究概要 |
研究代表者大鍛治隆司は、2段階式Carleman評価法を用いて熱型方程式に対する解の強一意接続性に関する研究を行い、ポテンシャルの特異性が臨界型である場合に得られた結果をまとめこれを22ページの論文として発表した。また、逆問題の分野における重み付き不等式に関してその背景・役割を再検討し、RIMS共同研究「逆問題への応用を意図した解析学の研究」(2012年7月25日~ 7月27日)において「2段式Carleman評価法I,II,III」として3回のサーベイ講演を行った。 また、新たに量子化学に関連した多体粒子に関するDirac作用素に関して基本的考察をHubert Kalf氏、山田修宣氏と共同で開始した。対象とするのはDezezinski氏が2012年初頭に数理物理学誌(IAMP News Bulletin)に紹介したある重要な未解決のスペクトル問題である。そのためまず最初に電子が2つある場合のクーロン型ポテンシャルを持つDirac-Coulomb作用素について考察し、その作用素のテンソル空間上の詳細な構造を明らかにした。次にこの結果を用いて、その作用素のスペクトルに関する諸性質(本質的自己共役性、本質的スペクトル、固有値の非存在)について詳細な分析を行い、先に触れたDerezinski氏の問題に対してその部分的解答を与えた。 さらに、濱田雄策氏(京都工芸繊維大学)と竹井義次氏(京都大学数理解析研究所)との共同研究において、整函数を係数を持つ偏微分方程式のCauchy問題に対する解の解析接続について考察を行い、Pathの変形理論における新しい方法を確立すると共に、それを用いて多重度が変化する特性面を持つ方程式に対して、解の大域的特異性の完全な構造を初めて明らかにした。
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