研究実績の概要 |
課題1.点過程論としてのギブス測度の再構成: 古典的諸結果の整理はほぼ終了し、これらの諸結果を網羅する簡明な記述方法(配置空間を無限点測度空間、相関測度を有限点測度空間上の関数と捉える)について最終検討の段階にある。ただし、当初念頭においた範囲を超えた諸結果に対しての拡張の可能性の検討までには至っていない。
課題2.点過程論の整備を土台とした諸課題への応用: 当初計画に述べたテーマ(2A)平衡過程に対する経路空間レベルの大偏差原理、(2B)“退化したGibbs測度”を巡る諸問題、例えば、 sine核の場合など、射影行列式過程(射影作用素に付随するフェルミオン過程) 、(2C)Dynkin同型、離散ループ測度、ループ消去マルコフ連鎖については地道な研究を続行した。 25年度に新たに取り挙げた応用的なテーマのうち、「②分枝過程より生成された点過程の特徴づけ」については解決を見たが、記述方法の改善に留まった。また、「①マルコフ連鎖の急減少現象(カットオフ現象)とカオスの伝播」については、その途上平成25年7月に浮上したテーマ「非可換群における諸成果の調査・検討」を経て、肯定的に解決でき、従来からの表現論(非可換フーリエ解析)を用いた計算結果が見通し良く理解でき、かつ証明されることがわかった。この際、1970-80年代に M. Kac, H.P. McKean, 田中洋らにより研究されたカオスの伝播の考えが鍵となったことは、予想を超えた成果であった。エーレンフェスト模型の場合についての予備的な論文を既に公表した。
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