平成26年度は主として、マルコフ過程の局所時間および滞在時間に関わる諸結果が本研究の枠組を拡張して捉えるという新たな方向性について追究した。 滞在時間はマルコフ過程の経路の確率分布であるから、空間を経路空間に持ち上げて、曲線を本研究における点過程論の「点」とみなし、確率分布をその「点」の汎関数として捉えれば、形式的には拡張できることは容易にわかる。したがって、局所時間は滞在時間の分布の密度関数であるから、その汎関数の微分となる。また、マルコフ過程が対称な場合、推移確率密度を共分散関数とするガウス過程が構成され、さらにマルコフ過程が強対称Right過程の場合には、このガウス過程と滞在時間、局所時間との間には、1984年のDynkin同型以来、Eisenbaum同型、Ray-Knightの定理の一般化等の興味深い関係がのあることが知られている。 これらの諸関係を本研究で再構築しつつある点過程論の枠組の中で捉えることが目的であり、とくにFock空間の同型(乃至準同型)対応がそれらの関係の本質であることを期待したが、持ち上げにより、めざましい結果は得られず、単に書き換えが可能であることを確認するにとどまった。 なお、25年度までの成果のうち、カオスの伝播の考えを用いたエーレンフェスト模型の漸近挙動に関する結果については、その後極めて簡明な形に整理でき、古典的な例の現代的な記述を入門書に記載することができた。
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