本研究の最終年にあたる本年度は,今までに整備・構築した基礎理論を応用・適用し,実施計画に掲げたそれぞれのテーマについて以下のような成果を得ることができた。 1.ハミルトン系を内包する非線形微分方程式系(1-2 生態学への応用) 昨年度は,捕食者・被食者モデルとして有名なロトカ-ボルテラ系に関するある現象を解析し,テーマ1の基礎理論の整備によって得られた手法が大いに役立つことを実証した。本年度は,さらに生態学的な妥当性を高めるために,考察するモデルを改良し,すべての解軌道が内部平衡点に漸近するための条件を得た(Appl. Math. Comput. 2013 に掲載済み)。そのためには,研究対象としたロトカ-ボルテラ系に同値変換できる非線形微分方程式系に関する摂動問題を考察した。 2.周期係数をもつ線形微分方程式系(2-3 テーマ1への帰還研究) 本研究では,周期関数を一般化した概周期関数をも含む適用範囲が広い関数族を定義し,係数がその関数族の性質をもつ線形微分方程式系や半分線形微分方程式系を研究対象として,その零解が漸近安定であることを保証する条件を得た(Monatsh. Math. 2012に掲載済み)。これはテーマ3とも関連を持っている。また,減衰係数をもつ単振子の零解が漸近安定であるための必要十分条件を得た(Proc. Amer. Math. Soc. 2013 に掲載済み)。 3.半分線形微分方程式系(3-2 テーマ1との関連研究) 減衰半分線形振動子や減衰優線形振動子の平衡点が大域的漸近安定になるための必要十分条件を得た(Acta Math. Hungar. 2012; J. Dynam. Diff. Equ. 2012 に掲載済み)。減衰優線形振動子に関する結果は,純粋数学の発展のみならず,船舶工学への応用が期待できる。
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