研究課題/領域番号 |
22540199
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
神本 丈 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (90301374)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2015-03-31
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キーワード | 有限型擬凸領域 / タイプ / ベルグマン核 / 振動積分 / ニュートン多面体 / 特異点解消 / トーリック多様体 / ピーク関数 |
研究概要 |
本年度の研究の成果として重要なものは、以下のふたつが挙げられる。 ひとつは、様々な数学の分野において重要となる振動積分の無限遠での挙動に関するものである.この研究は現在では主に、調和解析、実解析の分野で盛んに行われているものである.特に、近年重要となっているのが、特異点解消との関連で、これは特異点論、代数幾何などの分野にまたがる面白いテーマであることを示してもいる.さて、申請者の研究の成果を述べる。現在までに主になされてきたものは、相関数が実解析的である場合であり、これは特異点解消の研究との関連である意味で必要とされるものであり、無限界微分可能関数(以下なめらかな関数とよぶ)に結果を拡張することは、困難と思われてきた.そこで、私は、なめらかな関数のクラスにある特別なクラスを定義し、このクラスに関する関数に関して、トーリック特異点解消に関する結果を得た。その成果から、相関数がそのクラスに属している時に、非常に詳しい振動積分の挙動に関する成果を得ることができた。この解析で重要なのは、ニュートン多面体と呼ばれる、なめらかな関数に付随して得られる幾何学的な対象である。このニュートン多面体の幾何学的な情報から、定量的な意味で特異点解消を行うというプロセスを経て、なめらかな関数の場合にも振動積分に関して、非常に強い結果を得ることができた。 もう一つの成果は、有限型擬凸領域に関する不変量の決定に関するものである.具体的な領域を与えたときに、型(タイプ)よ呼ばれる不変量を決定するという問題は、非常に難しく、現在までのところ、ある特別なクラスの領域の場合しかわかっていなかった。しかし、領域の定義関数のニュートン多面体を用いることで、具体的な型を求めるアルゴリズムが得られることがわかった。これは、振動積分の研究に類似するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、有限型擬凸領域上の正則関数の挙動に関する研究として、特異点論的なアプローチが有用であることはわかっていたのであるが、これらが振動積分の研究に関して新しい結果をえるまで、発展できるとは考えていなかった。振動積分に関して研究をすすめるうちに、調和解析学における非常に盛んに行われている研究を凌駕する結果をえることができたことに、非常に満足している。さらに、もとの複素解析学の研究に戻って、成果を出す段階にきている。振動積分の研究とベルグマン核の境界挙動の研究は、密接に関連しており、これらの研究を同時に進行させている段階であり、研究の進展には、満足している。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、調和解析、実解析、複素解析における、様々な研究対象にかんして、特異点論的な手法を用いて、研究を進展させていく予定である。特に、振動積分の研究で、ニュートン多面体における詳しい研究から、今後の解析的な研究への応用への道筋が明確になりつつあるので、この方針に従って、研究を推進させる予定である。さらに、複素解析学における、バンプ関数、ピーク関数、ベルグマン関数に関する、様々な球界挙動に関する研究を、ニュートン多面体を用いた解析により、発展させていくことを考えている。
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