当該年度の主な研究成果は以下の2件である。 1.走化性方程式の後方自己相似解に関する研究成果。Type I爆発解の中で重要となる球対称な後方自己相似解に関してその安定性を示した。球対称な後方自己相似解は有限時刻で爆発する典型的なType I爆発解であり、無限種類存在する事が知られている。この研究では、空間の次元が3から9のとき、球対称なType I爆発解が同じ時刻で爆発する球対称な後方自己相似解の一つに収束する事を示した。この研究は、Type I爆発解の性質に関する研究が後方自己相似解の研究に帰着できる可能性を示唆していると言う意味で重要であると考える。 2.走化性方程式の振動解に関する研究成果。空間次元が2の場合に無限個の球対称な正の定常解が存在し、それらの定常解の積分量が8πである事が知られている。本研究では、それら定常解の間を振動する球対称な解の存在を示した。またディラックのデルタ関数の8π倍が当該方程式の特異定常解と理解でき、前述した定常解で近似できる事が知られている。これらの事実から、定常解と特異定常解の間を振動する解の存在も示す事ができ、それは無限時刻で爆発する解となる。現在までの爆発解の構造に関する研究は、爆発する速さやその時の解の形状に主眼を置く研究であった。しかし、ここで示した解は振動しながら爆発する解であり、この研究成果は爆発に至る過程も研究対象になりうる事を主張している。その意味で、本研究成果は重要であると考える。
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