研究課題/領域番号 |
22540200
|
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
仙葉 隆 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30196985)
|
研究分担者 |
鈴木 智成 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00303173)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 関数方程式論 / 走化性方程式 / 爆発解 / 振動解 |
研究概要 |
当該年度の主な研究成果は以下の2件である。 1. 走化性方程式の振動解に関する研究成果。 空間次元が11以上の場合に無限個の球対称な正の原点対称な定常解が存在し、それらが大小関係を持ちながら連続的存在している事が知られている。本研究では、それら定常解が原点対称な摂動に対して安定である事を示し、その事の応用としてそれら定常解の間を振動する原点対称な解の存在を示した。またこれらの定常解の極限として特異定常解が存在し、定常解と特異定常解の間を振動する解の存在も示した。この解は無限時刻で爆発する解となる。これら定常解は、藤田型非線形熱方程式の定常解でもあり、その方程式でも同様にして定常解の安定性や振動解の存在が既に示されている。しかしながら、考察している方程式が異なるため藤田型非線形熱方程式の結果が直接走化性方程式の結果となるわけではない。その意味で本研究は、非線形藤田型熱方程式と走化性方程式の解構造の関連を示した新たな知見であると考える。 2.2次元領域上走化性方程式の爆発解の漸近的な形状に関する研究成果。 2次元領域上走化性方程式の爆発解は、爆発時刻における爆発点において本質的にデルタ関数の8π倍の特異性のみが現れる事が知られている。これは2次元全領域における全ての定常解が8πの総量を持つ事から、その定常解の総量が爆発点に凝縮する事によって生じる特異性である事が予測される。本年度は、2次元全領域におけるある種の相似変換に不変な走化性方程式に対して全ての原点対称な爆発解に対して前述した予想を示し、爆発の速度も解や爆発時刻・爆発点によらずに本質的に一種類である事を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、走化性方程式の典型的な爆発解の構成、一般的な解の振る舞い、そしてそれらの性質と藤田型非線形熱方程式等の走化性方程式と類似する方程式の爆発解の性質の比較を行うことである。 本研究期間の3年目に当たる平成24年度終了時点まで、走化性方程式の無限時刻爆発解、振動解の構成に成功した。さらに、Type I 爆発解の典型例である後方自己相似解の安定性を示すことでそれらに近い解も Type I 爆発解である事を示した。この事は、特殊な解の周辺にある解の性質を明らかにしたと言う意味で一般的な解の振る舞いについて言及した成果であると考えている。 また、高次元領域における走化性方程式の定常解の安定性を示したが、この定常解は藤田型非線形熱方程式の定常解でもある。藤田型非線形熱方程式の定常解の安定性は既に知られているが、定常解が関数として等しくても一方の安定性が直接他方の安定性を意味するわけではない。実際、当該の関数が走化性方程式の定常解として安定である事を示す際に、藤田型非線形方程式の定常解の安定性の証明に使われた評価とは異なる評価を用いる必要があった。しかし、どちらの場合も定常解が大小関係を保ちながら連続的に存在している言う定常解の層構造と安定性が密接な関係を持つ事が明らかになった。この意味でこの成果は走化性方程式の定常解の安定性としての新たな知見であり、なおかつ異なる二つの方程式の解の性質が方程式を超えた定常解自身の性質によって決まっている事を意味する。この意味で、主な対象である走化性方程式の解の性質を明らかにするだけでなく他の方程式の解の性質との関連に言及した成果でもあると考える。 これらの事を踏まえて本研究は概ね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究期間の4年目に当たる今年度も最新の文献の検索や討論の為に研究経費を使用する事を考えている。収集した資料や討論によって得られた新たな研究手法を踏まえながら適時研究計画の微調整を行っていく事を考えている。 特に本年度は、十数人の国内外の研究者を招へいして研究集会を開催し、今まで自身研究によって得られた成果に加えて、研究集会の参加者によって得られた新たな成果の発表とそれを踏まえた討論を行い、新たな研究の方向や手法を模索していきたいと考えている。 具体的な研究に関しては以下の事を計画している。 走化性方程式の解については現時点まで主に原点対称な解についての性質を研究してきたが、原点対称と言う条件を取り払って解の性質を明らかにしていきたいと考えている。特に、原点対称ではない爆発解の構成手法についても探っていきたいと考えている。この問題に適応できる新しい手法を見つける事は困難と考えら得れるので、当初は原点対称解に非原点対称な摂動を加えた解を構成する手法を探っていきたいと考えている。 また、現在まで得られた走化性方程式の解の知見や研究手法を踏まえて藤田型非線形熱方程式等の走化性方程式と関連する方程式の解の性質の研究やその事による異なる方程式間の解の性質や構造の類似性を明らかにしていく事に重点を置いて研究する事を考えている。特に爆発解について今まで捉えられていなかった解を構成していきたいと考えている。この研究に関しては、当面原点対称な解を中心に研究を行ってい行く事を考えている。
|