研究概要 |
2次元外部領域における波動方程式、摩擦項付き波動方程式および摩擦項付き非線形波動方程式の初期値境界値問題において、初期値がコンパクトな台を持つ場合は解の減衰評価は知られていたが、初期値がコンパクトな台を持たない場合は部分的な結果しか得られていなかった。我々は初期値がHardy空間に属する場合を考え、エネルギー法において、Morawetzの手法とFefferman-Steinの不等式を用いることで、波動方程式の場合は、局所エネルギー減衰評価、摩擦項付き波動方程式の場合は解の減衰評価を得ることに成功した。また、摩擦項付き波動方程式の場合は、初期値がHardy空間に属するとき、解の時空に関するL2空間の正則性を得ることが出来た。これらの結果は熱方程式でも同様の結果が得られる。特に熱方程式の場合は、Hardy空間より広いL1空間に初期値が属する場合は、この正則性の結果は一般には得られない。摩擦項付き非線形波動方程式では、重み付きの非線形構造に着目することで、線形方程式の場合には使わなかったエネルギー評価のある項を使い、Hardyの不等式を用いることで初期値がコンパクトな台を持つ仮定を取り除き、解の減衰評価を得ることに成功した。これらの方法は、2次元全空間の初期値問題に対しても有効である。また、線形粘性弾性体方程式の初期値問題への応用も期待される。さらに、圧縮性Navier-Stokes方程式の初期値問題の解は,定数平衡状態の近くではその第一近似である線形化方程式が双曲型放物型混合方程式であり,特にその密度部分は,線形粘性弾性体方程式を満たすため、圧縮性Navier-Stokes方程式の定数平衡状態の安定性の解析への応用が期待される。
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