研究課題/領域番号 |
22540207
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
立川 篤 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50188257)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 変分問題 / 非線形偏微分方程式 / 調和写像 / 弱解の正則性 |
研究概要 |
変分問題と関連した非線形偏微分方程式の解の正則性に関して、本年度も引き続きFinsler 多様体への調和写像の正則性とp(x)-調和写像の正則性について研究を行った。Finsler 多様体への調和写像については、Riemann 多様体への調和写像の研究において1982年に発表されたGiaquinta-Giusti によるone-sided 条件と呼ばれる条件に対応する条件と、さらに強い構造的な条件を課すことにより、前記のGiaquinta-Giusti の結果に対応するヘルダー正則性に関する結果を得ていて、論文として投稿していたが、これが今年Bulletin of London Mathematical Society 掲載された。また、定義域側の多様体が2次元である場合については前記のような強い条件を課すこと無く正則性を得られた。論文としてまとめ、投稿中であったが、これもHouston Journal of Mathematicsに受理された。一方, p(x)-growthを持つ汎関数の最小点となる写像の正則性の問題については、数年前よりCatania 大学のMaria Alessandra Ragusa 准教授と行っている共同研究が昨年度当たり実を結び、あらたな「量」を導入することにより、p-調和写像(p は定数)の部分正則性に対するGiaquinta-Modica による1986 年の結果に対応する結果を得る事ができた。これによりp(x)-growth を持つ汎関数の研究において、予想されていながら未解決であった重要な結果の1つを得ることができ、これがTransaction of American Mathematical Societyに掲載受理された。24年度にはこの結果をさらに改良する結果もほぼ得られ、現在投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Finsler多様体への調和写像の正則性に関する研究は、本研究課題の研究期間を後1年残して、当初予想していた結果まではほぼ得られた。その意味では予想通りの結果を、予想より早くに得られた。しかし、その先の展望はまだ開けていない。 一方、p(x)-growthを持つ汎関数の最小点となる写像の正則性の問題は順調に進んでおり、特にp(x)-調和写像の正則性に関しては、当初の予想を越えるペースで結果を得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
我々が順調に進めているp(x)-growthを持つ汎関数に対する解の正則性の問題は、ドイツ、イタリア等でも盛んに研究されており、競争の激しい分野である。現在我々の研究が一歩先んじているこの方面の研究に集中的に力を注いで行く予定である。具体的な方策としては、これまで以上に 共同研究者のMaria Alessandra Ragusa氏との連絡を密にし、研究を進めていく予定である。 一方、Finsler多様体への調和写像に関する研究は、当初予想していた結果はほぼ得ることができ、一応の区切りが着いたとも言える。そのため、次のステップは現在模索中であり、本研究課題の研究期間が残すところ1年となってしまったこともあり、この問題については研究期間内に新たな結果が得られることはあまり期待できない。むしろ、これから先進むべき方向を見極め、今後の研究につなげていきたい。
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