研究課題
22年度は、測度付き亜群、特に測度付き同値関係とその部分同値関係に関する研究を行った。エルゴード的測度付き同値関係は、よくvirtual subgroupと呼ばれるように群論との類似性に重点を置いた方向から研究がなされてきた。本年度は、この考え方に沿って群の「部分群」に相当するエルゴード的部分同値関係に焦点をあてた解析を開始した。群論での正規部分群に相当する概念は、エルゴード的部分同値関係に対してもFeldman-Sutherland-Zimmerらによって導入され、連携研究者である青井氏と研究代表者(山ノ内)はこの正規性に関し以前の共同研究で集中的な解析を行った。22年度は、この「正規性」よりも弱い「通約的」部分同値関係(あるいは「ヘッケ対」ともいう)に関して研究を行った。この概念はもともと数論における群のヘッケ対を拡張した概念になっており、エルゴード部分同値関係の枠組みにおいても既に数論で確立されているのと同様な理論が展開できるのではないかと予想されていた。本研究では、その期待される理論が実際に展開可能であることを証明することができた。例えば、ヘッケ対となっているエルゴード同値関係とそのエルゴード部分同値関係からは、数論におけるヘッケ環を拡張した「ヘッケフォンノイマン環」と呼ばれる作用素環を構成できることを明らかにしている。一方、エルゴード同値関係とそのエルゴード部分同値関係からは、ある一定の手続きを経ることでフォンノイマン因子環とその部分因子環が構成されることが分かっている。本年度の研究では、上述のヘッケフォンノイマン環はこの因子環の対から不変量として発生する相対可換子環中に出現することを明らかにし、Jonesによる部分因子環の理論とも深い係わり合いがあることを示すことに成功した。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Publications of Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University
巻: 46 ページ: 607-667