本研究の特徴は、測度付き亜群、特にエルゴード的測度付き同値関係を、代数における群の一般化としてとらえることによってその代数的・解析的構造を明らかにすることであった。本年度は、昨年度に引き続き、群論的立場からみればエルゴード的測度付き同値関係の「部分群」に相当するエルゴード的部分同値関係について研究を行い、その中でも、連携研究者である青井氏と共に研究代表者(山ノ内)が導入した概念である、エルゴード的測度付き同値関係とそのエルゴード部分同値関係の「ヘッケ対」に注目をした。昨年度はエルゴード的部分同値関係のヘッケ対に対し、対応する指数コサイクルの漸近的値域の組が群のヘッケ対をなし、さらにそれは群論で言うところのSchlichting完備化の一般化に相当することを明らかにした。しかし、指数コサイクルの漸近的値域群(の組)は一般に指数コサイクルの選び方に大きく依存しているため、昨年度の成果はその意味でまだ不十分であった。研究代表者は、指数コサイクルの漸近的値域群以外により効果的にもとのエルゴード的部分同値関係の情報を含んだ(理想的には同値関係のみで決定される)群ヘッケ対が存在する(定義できる)のではないかという予想のもと本年度の研究を開始した。その結果、その候補者となり得るヘッケ対の「小さい」部分群の特定には成功したと考えている。従って、現時点では予想されるヘッケ対において「大きい」群がどのように定義されるか、という問題が残っている。これに関しては残念ながら未だ部分的な結果しか得られていない。しかし、その「大きい」群の候補となる物についての見解(つまり予想される具体的な定義)は連携者である青井氏と一致している。またその見解を補強する結果も幾つか得られている。よってこの対象が実際に我々が探しているものであることを立証する作業は今後の研究課題である。
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