研究概要 |
(1) 動的補償器を内包する安定化機構の新しい枠組みを提案した:被制御系の状態をu(t,.), 補償器の状態をv(t)とするとき,従来の解の減衰評価とは異なる新たな枠組みを構成した:すなわち,u(t,.)-Xv(t)→0 となるような有界作用素Xの構成を無限次元Sylvester方程式を介して行った.(a)被制御系の係数作用素 L に付随するRiesz基底の存在を仮定しない,(b)σ(L)には一般化固有空間が伴う,という2つの一般的な問題設定のもとで,有限次元制御論とのギャップを完全に埋めた.新たなFourier解析的アイデアにより,標準的な可観測性,可制御性の条件を有限次元制御論とはまったく異なる別の視点から導いた.その結果,固有値の代数的多重度が1より大きくても,単一のセンサ,アクチュエータで安定化可能な場合がある(最小実現)ことを証明した. (2) 静的フィードバック機構をもつ単純な放物型制御系において,係数作用素Lのスペックトルσ(L)が単純固有値から成る場合のスペクトル再配置問題について,つぎの結果を得た:可観測性の仮定のもとで不安定固有値を安定領域に移す具体的なアクチュエータの代数的構成を明らかにし,固有値の一部λが本来の安定固有値に一致するよう設計すれば,λは必ず一般化固有空間を伴う.この新たな代数・幾何学構造により,制御系の安定性が保証されても代数的増大度が加わることを明らかにした. (3) 第1種(Dirichlet型)境界をもつカップリング1次元移流拡散方程式系の安定化制御系の構成を行った:境界観測・境界入力機構の場合,楕円型作用素の分数ベキを利用する解析的手法には微分方程式系の適切性の検証において本質的欠陥があるため新たに代数的手法を提案し,系の有限次元構造に可観測性,可制御性を有することに着目し,系の安定度を増大させる有限次元コントローラを設計した.
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