前年度、濱田航平氏(当時:大阪市立大学大学院博士前期課程学生)との共同研究において、これまで 3 以上の奇数個の平面型の end のみを持つ例(向き付け不可能な compact Willmore 曲面の内、 Willmore 汎関数の値が最小となる例を、共形変換により与える目的で、 Kusner により構成されていたもの)しか知られていなかった、射影平面上の n-noid について、平面型の 1 個の他は catenoid 型の end を持つ例を、 end の個数が 4 以上の偶数である場合について構成していたが、本年度は、これに引き続き、 4 以上の偶数個の catenoid 型の end のみを持つ例の 1 パラメーター族を構成した。この例は、 1 個の end の退化を許せば、前年度の例と Kusner の例を結ぶ連続変形族となっている。これらの例はいずれも、奇数位数の巡回群の作用で不変となっているが、同じ対称性と end の個数を仮定した場合、奇数位数では面対称なものを同一視すればこれらの族に限ること、また偶数位数の例は存在しないことも同時に示した。奇数個の catenoid 型の end のみを持つ例の存在、並びに、偶数個の平面型の end のみを持つ例の存在については、以前未解決であるが、今回の結果は、仮にそれらの例が存在するとすれば、対称性が低いもしくは無いことを示唆しており、極小曲面の存在に関する新たな障害として、興味深いと思われる。
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