1次元非線形2×2保存系に対するRiemann問題について、初期値が大きい場合の解の存在性の研究およびn次元空間における非線形放物型-双曲型(非線形退化放物型〉方程式に対する初期値・境界値問題のエントロピー解の存在性、一意性、安定性、漸近挙動をkinetic formulation法(kinetic理論)を中心とし、実解析的、測度論的、関数解析的手法を用いて研究した。 研究初年度である本年度は、これまでの研究を検討・整理し、新しい知見と結果の取得に重点をおいて、関連した研究集会において、資料と最新情報の収集を行った。 研究成果については、1次元2×2保存系のRiemann問題の可解性については、1960年代後半から70年代にかけてのSmoller-Johnsonによる一連の結果とBorovikov(1972)そしてKeyfitz-Kranzer(1978)による結果がある。本研究では、Smoller-Johnsonの証明に不備を見つけ、反例をもってそれを指摘し、さらに再証明を与えた。この証明方法は新しい手法を提示しており、これまでの知られた結果で仮定されていた"凸性"を取り除くことができた。もう一つの結果は、1970年代前半から後半にかけてのDafermosのRiemann問題の解の存在に関する一連の結果での証明方法を用いて非線形波動方程式を抽象化した保存則系の解の存在定理を得た。この結果は流束に関する仮定を緩和している。さらに、流束が狭義単調である場合の保存則系や粘性保存則系にも適用でき、今後において様々な非線形偏微分方程式にも応用されることが期待される。
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