本研究では,量子群 Uq(sl2) の半単純ではない表現に注目し,この表現と対応する結び目の量子不変量についての研究を進めてきた.通常の3次元空間中の結び目に対しては,本研究の開始前からこのような不変量が構成されており,この研究では,任意の3次元多様体中の結び目に対するこのような量子不変量の構成とその性質を調べてきた.構成そのものについては,3次元多様体に対するヘニングス不変量と,以前構成した通常の3次元空間中の結び目に対する不変量の構成法とをあわせることで前年度までにできていたのであるが,本年度はその性質を調べることに重点をおいて研究を進め,カラードアレキサンダー不変量と関係を明らかにした. 通常の3次元空間中の結び目に対して定義されたカシャエフ不変量という量子不変量はそのある極限が結び目補空間の双曲体積になると予想されている.本研究により構成された3次元多様体中の結び目に対する量子不変量は,このカシャエフ不変量を一般化したものを含むのである.カラードアレキサンダー不変量との関係を用いることで,3次元多様体中の結び目に対してもカシャエフ不変量の一般化が計算できるようになり,簡単な例に対して,カシャエフ不変量の一般化と補空間の双曲体積との間の関係を確認することができた. 研究成果については,数学の研究会ばかりでなく,中国,天津での国際会議 The 29th international colloquium on group-theoretical methods in physics や立教大学での研究会 Exact results in SUSY gauge theories and integrable systems でも発表し,物理の研究者にも関心を持ってもらうことができた.
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