研究課題/領域番号 |
22540237
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研究機関 | 四日市大学 |
研究代表者 |
金子 和雄 四日市大学, 付置研究所, 研究員 (50571486)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | パンルヴェ型方程式 / 有理型解の分類 / 退化系 / モノドロミ / ベックルント変換 / 対称解 |
研究概要 |
(a)4次元パンルヴェ型方程式 21,21,111,111(藤、鈴木系)について、特異点の近傍における有理型解の分類を行った。4次元パンルヴェ型方程式 31,22,22,1111(笹野系)は21,21,111,111と同じく第6パンルヴェ方程式の拡張とされているが、同様に特異点近傍における有理型解を分類することによりその違いを明らかにし 2012-9-18 日 本数学会秋季総合分科会(九大)にて発表した。 (b)4次元パンルヴェ方程式の退化系については川上、中村、坂井らの研究があり、この中で、((11)),((1)),111は 第4パンルヴェ方程式の拡張であり、16個の対称解を分類し、それらがベックルント変換で互いに移り合うことを示した。またこのうちの一つの解について、線型モノドロミを具体的に計算した。これについては今年9月、日本数学会秋季総合分科会(愛媛大)にて発表する予定である。 (c)同じく第4パンルヴェ方程式の拡張である行列型パンルヴェ方程式 ((2)),((2)),211および第2パンルヴェ方程式の拡張である行列型パンルヴェ方程式 (((2))),(((11)))についても対称解の存在を示し、それぞれ 12個、7個の対称解を求めた。 (d)Mathematische Nachrichtenに投稿中の論文"Meromorphic Painleve transcendents at a fixed singularity"に対し、Copyright transfer agreement と掲載前の原稿の最終チェック結果を提出した。近日中に発行される見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a)4次元パンルヴェ型方程式 21,21,111,111(藤、鈴木系)と31,22,22,1111(笹野系)については、有理型解の分類が完成した。両者の違いは、前者にはq1,q2にn位の極を持つ2-パラメータ解が各特異点t=0,1,無限大の近傍に存在するのに対し、後者にはゼロパラメータ解のみ存在すること、また、後者には特異点t=1,無限大の近傍には極を持つ解が存在せず、正則解のみであり、第6パンルヴェ型方程式に対しては、前者のほうが自然な拡張と言える。この内容については学会発表も出来たが、これらの解がベックルント変換で互いに移り合うことを示すことが未完である。21,21,111,111には(藤、鈴木系)の他に(津田系)というのがあり、両者は同じものと言われているが、証明はされていない。後者についての有理型解の分類が未完であり、これを完成させることにより両者の違いを明らかにできる。 (b)4次元パンルヴェ方程式の退化系のうち、第4パンルヴェ方程式の拡張である 行列型パンルヴェ方程式((2)),((2)),211および第2パンルヴェ方程式の拡張である行列型パンルヴェ方程式(((2))),(((11)))については、平成25年度以降に予定していたが、それぞれ12個、7個の対称解を得たことから、これらの補完計算を行うことにより、対称解の分類に近ずくことが出来た。 (c)4次元退化パンルヴェ型方程式 ((11)),((1)),111の解空間の一つの表現を得たことから、今まで気付かなかった第4パンルヴェ方程式の解空間が見えて来た。これについては平成25年9月の日本数学会秋季総合分科会(愛媛大)にて発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(a)4次元パンルヴェ型方程式には第6パンルヴェ方程式の拡張として、坂井により新しく見出された行列型パンルヴェ方程式22,22,22,211があり、これについて各特異点近傍における有理型解の分類を行うとともに、この解に対する線型モノドロミを具体的に計算する。 (b)平成24年度に手掛けた行列型4次元退化パンルヴェ型方程式の中で第4パンルヴェ方程式の拡張である ((2)),((2)),211 および第2パンルヴェ方程式の拡張である(((2))),(((11)))に対し対称解の分類を完成させ、線型モノドロミを具体的に計算する。 (c)4次元パンルヴェ型方程式 21,21,111,111(藤、鈴木系)の退化系の中で第5パンルヴェ方程式の拡張である(2)(1),111,111と(11)(1),21,111 およびD6型第3パンルヴェ方程式の拡張である(11)(1),(11)(1)について特異点近傍における有理型解の分類と線型モノドロミの具体的計算を行う。4次元パンルヴェ型方程式のその他の退化系(笹野系および行列型)についても同様の計算を行う。 (d)4次元パンルヴェ型方程式21,21,111,111の(津田系)について、特異点近傍における有理型解の分類を完成させ、(藤、鈴木系)との違いを明らかにする。違いが明らかになった場合には、その退化系を調べる。 (e)第4パンルヴェ方程式の原点近傍には4個の有理型解が存在するが、無限遠点近傍における漸近解を調べることにより接続問題を解く。
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