研究課題/領域番号 |
22540240
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
藤村 雅代 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 総合教育学群, 講師 (00531758)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 解析学 / 複素力学系 / 数式処理 / 有理関数 / モジュライ空間 |
研究概要 |
複素力学系の理論に応用するため、有理関数のメビウス共役類からなるモジュライ空間の忠実な表現を与えることが本研究の目標である。平成24年度は前年度に引き続き数式処理システムを用いた計算実験を交えて研究を行うと同時に、本研究課題の研究から派生したいくつかの有理関数に関する研究も行った。 有理関数に関する Goldberg の問題 (特異点集合に対応する有理関数の同値類の個数を決定する問題) に関しては、奈良女子大学の谷口氏、Kabur 大の Karima 氏との共同研究が進み、22年度には Bell 族を使ったジェネリックな部分に関する解析、23年度には拡張 Bell 族を導入した解析を行ったが、これらの成果が24年度にそれぞれ Comm. Japan Soc. Symb. Alg. Compt. と Proc. of the 19th ICFIDCAA に掲載された。この Goldberg の問題の研究については24年度には射影化に成功し、いままでより統一的に解析を行うことができるようになった。 ジュリア集合の描画アルゴリズムに関して、24年度も防衛大の後藤氏と防衛研究所の吉田氏と共同研究を継続し、DEM (Distance Estimator Method) で用いられる評価式として、この研究で用いた手法のもとで最良のものが得られた。この研究の成果は24年度に投稿し受理され25年度に公刊予定である。 さらに、低次のブラシュケ積が持つ幾何学的性質についての研究も行った。これについてもいくつかの興味深い結果を得た。この成果をまとめた論文は現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有理関数のモジュライ空間の力学的パラメータによる記述については、モジュライ空間そのものではないが、類似の空間上の問題である Goldberg の問題の解析が順調に進展した。 本研究目的の一つとして、当初は多項式写像と有理関数の退化現象について比較することも挙げていたが、24年度までの実験や研究から多項式写像が当初の予想以上に有理関数としては特殊なものであることが判明した。そのため対比を行うことをせずに、それぞれを個別に扱うことにした。 本研究から派生したいくつかの問題に関しても研究が進み、特に Julia 集合の描画に関する DEM の研究については24年度にさらに評価式がシャープになり、この手法における最良の評価が得られた。これは Fisher らによるアルゴリズムで使われる距離の評価を具体的に計算できる形で与えるものである。この結果は描画の計算速度を上げることには貢献しないが、描画後の Julia 集合の数学的正しさの保証を与えるという点で価値があり、実際に今後において反復による誤差を抑えた計算法への応用が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度までの結果を発展させるとともに、今までの成果をまとめて発表することに重点をおく。 主目的の有理関数のモジュライ空間の力学的パラメータによる記述については、今までの実験結果のまとめを中心に行うが、必要なら追加実験も行う。目的のうちの一つであった有理関数と多項式写像の対比については、当初の想定以上に両者に違いがあることが分かったため、今年度は対比のためには時間を割かずに主目的の解決に集中して研究を進める。 本課題研究の関連の研究として、Goldberg の問題の射影化については現在まで得られている結果を発表する準備を進める。今年度の前半には口頭発表を行いたい。Julia 集合の DEM アルゴリズムについて得られた評価式は、実際の描画に適用できると同時に、応用として反復による誤差を抑えた計算方法を開発するためのキーツールとして利用できると考えている。時間が許せば、数式処理分野の研究者の協力を仰いで、反復の誤差を抑えた計算法の実装も行いたい。
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