研究課題
本研究の目的はアフィン・リー代数に関連した周期的可積分セルオートマトンを構成し、その等位集合の構造を解明することである。平成24年度の研究成果は以下のとおりである。1.トロピカル周期戸田格子(超離散周期戸田格子)の可換なフェイズフローを、周期箱玉系の場合の構成法の一般化および量子群の結晶基底に対する纏絡写像の一般化により構成することに成功した。この力学系については、ラックス形式に基づく離散周期戸田方程式の保存量のトロピカル化を使って定義される「スペクトル曲線」の滑らかさ(ソリトンの振幅に重複がないこと)の仮定のもとに、ヤコビ多様体のトロピカル化として等位集合を記述するという先行研究があるが、可換なフェイズフローの構成法については知られていなかった。本研究ではまずこの力学系を2色の帯により「セルのないセルオートマトン」として実現した。量子群の結晶基底を幾何学化した幾何クリスタルの理論において双有理的な纏絡写像が構成されており、その超離散化としてクリスタルの組合せ論的な纏絡写像が得られることが知られていた。本研究では超離散化(従属変数を含む全変数離散化)はせずにトロピカル化(方程式の区分線形化)のみを行なって得られる纏絡写像の満たすヤン・バクスター関係式を用いるというアイデアにより、上述の2色の帯による記述と合わせて可換なフェイズフローの構成を行なった。結果は論文として出版し、国外および国内学会において発表した。この結果を基にして、スペクトル曲線の滑らかさを仮定しない場合の等位集合の構造に関して研究が進展中である。2.等位集合の構造を反映する概念として、周期的可積分セルオートマトンのエルゴード性を考察し、素数の性質と関連したいくつかの興味深い観察を得た。学術上の新たな知見となりうるか現在検証中である。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: Vol.81 ページ: 104005-1~7