昨年度までの研究で調べたダスト成長、微惑星形成、微惑星集積初期の天体合体成長過程では、天体圧縮として衝突合体時のものだけを考慮していた。その結果、衝突圧縮のみでは氷天体内部密度は密な状態の10万分の1程度に保たれ圧縮は進行しないことが明らかにされた。 それに対し本年度はガス動圧や天体自己重力による準静的な圧縮過程をさらに取り入れ氷天体の進化を調べた。まず、高空隙率天体の準静的圧縮過程を数値計算を行うことにより、天体の圧縮強度を調べた。天体圧縮の数値計算は、天体衝突計算の数値コードに収縮する周期境界条件と内部圧力測定を新たに導入し行った。多数の圧縮計算を行った結果、普遍的に圧縮強度として空隙率の3乗に比例するという経験式が得られた(Kataoka et al. 2013)。 次に、得られた高空隙率天体の圧縮強度経験式を用いて、氷天体の成長と移動過程を再計算した。円盤内での移動が主に起こる100mサイズの段階では、ガス動圧による静的圧縮が効果的に進行し、その結果天体内部密度は2桁程上がる。これにより微惑星形成領域は多少狭まり6AUまでとなる。微惑星形成領域における初期微惑星面密度にはこれまで通り数10倍程度増大がみられた。さらに、天体がkmサイズ以上に成長すると自己重力による圧縮が効き始め10kmサイズでは空隙率は90%程度となり彗星やカイパーベルト天体などの同程度まで圧縮されることが明らかになった。さらなる圧縮は天体が融解することによって進行するであろう。 今後は本研究で得られた微惑星分布を初期条件として惑星形成過程を再検討する必要がある。本研究が示した初期微惑星面密度の増大は惑星成長過程を大幅に加速し、惑星落下問題や微惑星破壊問題などの解決に寄与する可能性がある。
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