研究概要 |
従来の多層膜EUV反射鏡では、惑星間空間を漂うヘリウム原子からの散乱光(波長58.4nm)も比較的効率よく反射集光してしまうため、EUV星の観測時には最終的なS/N比の低下をまねいていた。本研究では、成膜装置で単層膜を作り、その反射率特性からEUV波長領域での光学定数(n,k)を導出し、新しい多層膜EUV反射鏡の開発に取り組んだ。今回使用する装置で成膜したY2O3薄膜と従来からある文献値の光学定数の違いを見つけた。例えば、@30.4 nm, n=0.80, k=0.14 (実測) <-> n=0.77, k=0.21 (文献値)@58.4 nm, n=1.03, k=0.49 (実測) <-> n=1.04, k=0.54 (文献値)と大きな開きがあることが分かった。さらに、Y2O3結晶は、蒸着する際に用いるスパッターガスのエネルギーに依り組成比が変化する。その結果、光学定数(n,k)も大きく変化することも理解した。今回、新たに求めた光学定数に基づき多層膜反射鏡を試作し、目的通りの反射率特性を持つことを確認した。この結果は、米国のSPIE学会にて公表した。
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