研究概要 |
本研究は、最も近い系外銀河である大マゼラン雲に着目し、星間ガスの諸相、分子・原子・イオンの空間分布・物理学的性質を観測的に調べる。そして、最新の赤外線データから、星間ダストの性質や若い進化段階にある星についての情報を取得し、水素原子ガス等既存のデータを合わせて比較を行い、星間物質諸相の基本的性質を明らかにすることを目的としている。22年度は、NANTEN2サブミリ波望遠鏡による12CO(2-1)輝線を用いた分子ガスの広域観測の遂行、ASTEサブミリ波望遠鏡及びMopraミリ波望遠鏡による観測結果を用いて分子雲の物理状態の調査、赤外線天文衛星Spitzer及びHerschelによる星間ダスト及び若い星の調査と分子雲の比較を行った。 NANTEN2による12CO(2-1)輝線観測は、大マゼラン雲に存在する大規模星団形成領域、N44領域を含む分子雲群に対し行った。その結果、星団形成が活発な電離水素領域の方向では、12CO(2-1)輝線と12CO(1-0)輝線比が高く、実際、大質量形成を伴わない分子雲に比べ比が2-3倍高くなっており、高温もしくは高密度であること示された。また、Mopra及びASTE望遠鏡によって得られた高分解能観測からは、星形成の活発さと分子雲ガス塊の温度との相関が示された。さらに、ハーシェル赤外線望遠鏡100-500ミクロンの遠赤外線全面探査を開始した[HERITAGE : PI M.Meixner]。点源カタログ作成及びそれを用いた若い星の選出方法を、AKARI, Spitzer赤外線衛星による結果を参考に検証している。また、中間赤外線一遠赤外線にわたるデータも合わせ、分子雲内のダスト分布、温度分布を求め、星形成活動との比較を進めた。
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